記念写真を一枚
記念写真を一枚
「豚平!!俺とも写真撮ってや!」


あの写真を和嶋先生や千秋に自慢したら幹部全員に広まり、今はちょっとした写真ブームになっている。

前よりも自然な笑いが増えた彼は、見ていて飽きない。

豚平さんの事はやはり幹部全員が心配していて、写真を見せたら嬉しさ半分嫉妬半分のような顔をしていた。

それもそのはず。

豚平さんは、写真に写りたがらなかったからだ。


「前撮ってあげたやん」

「ケチ!!」


せいぜい撮るとしても今みたいな笑顔はしないため、自分がとった最高の笑顔は羨ましいのだろう。

あの写真は、綺麗に写真立てに飾って取っておいてある。

目につきやすいようにわざと飾ってあるのは、写真を見た彼の複雑な表情が面白いからだ。

見る度に口元が緩むのは見逃して欲しい。


「じゃあ、今度どっか行った時集合写真でも撮りましょ」

「そんぐらいやったら、まあ」


渋々と頷かれた言葉に、ひっそりとガッツポーズをする。

写真ひとつでこんなに喜ぶのは女子高生かと思う気持ちは分からなくもないが、これは旅行の約束を取り付けたも同然だし満足だった。

豚平さんとの写真が増えるのは嬉しいが、他の人との写真が増えるのは少し妬けてしまう。

それでも、あの写真よりいい笑顔をする写真がきっとこれからもないだろうという事実で、優越感は満たされ続けるのだろう。
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