Dear My Snow【短編】
帰国



ねぇ、明日は会えるかなぁ?




「部長、明日まで出張じゃなかったんですか?」

予定より早い上司の帰国。
明日渡すはずの書類を持って私は部屋の端にある彼のデスクに近づく。

「ああ、なんとか昨日までに仕事終わらせてきた」

ふぅ、と息を吐いてネクタイを緩める彼に、普段疲れを表に出さない彼がどれだけ疲れているのかが伺える。

「何か急ぎの用事でも出来たんですか?」

「いや、最初から予定があったんでね、今日には帰ってくる予定だったんだ」

首を傾げた私に答えた彼の言葉に、心がしぼんでいくのがわかる。


―――今日は一緒に過ごせるのかなって、期待、しちゃってた。


「じゃあ、今日はもう帰宅されるんですね。この書類は私が――」

ちくりと痛む胸の痛みを無視して。

片づけておきます、と続けようとした声は、グッ、と不意に腕を引かれた驚きのあまり喉の奥に引っ込んだ。


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