Graduation~3年後の「これって・・・」~
だから練習は厳しい。月曜日以外は基本的に練習、そして試合、更には当然だけど、チア活動がある。


この日、SHRが長引き、部活に急ごうと慌てて席を立った私は、偶然近くを歩いていた男子とぶつかってしまった。


「キャッ。」


「あ、ごめん。大丈夫?」


倒れそうになった私の手を思わず掴んでくれたのは、岡野哲哉(おかのてつや)くん。


「う、うん・・・大丈夫。私の方こそごめんね。ちょっと部活に遅れそうで慌ててたから・・・。」


手をつないだ格好になって、私はちょっとドキドキしてるけど


「そっか、大変だねぇ。野球部は雨になれば中止もあるけど、その点、室内の三浦さんたちには、それすらないんだからなぁ。」


岡野くんは何事もなかったかのように手を離す。岡野くんとは、彼が私のクラスに転校して来た小5から高1になった今まで、なんと6年間クラスが一緒の「腐れ縁」。そんな人は、他には当然いなくて、機会があれば、こうやって話もする。


「うん。確かに思ってた以上に大変だけど、でもずっと憧れてた部活だから、楽しいよ。」


私が笑顔で答えると


「そうか、三浦さんは頑張り屋だからなぁ。僕も見習わなきゃいけないんだけど、やっぱり無理だから・・・。」


そう言って、岡野くんは頭を掻くような仕種をする。


「でも岡野くんだって、中学の頃はテニス頑張ってたじゃない。」


「頑張ってないよ、みんなの足、引っ張ってただけ。僕は運動苦手だし、親に言われて、仕方なくやってただけだから。内申書対策でね。」


そんなことを言う岡野くんは


「三浦さんには及ばないけど、僕もようやくやりたい部活が見つかったから、まぁ自分のペースで頑張るよ。」


「そっか。パソコン部、だよね。」


「うん。チヤ部と違って、活動は週2だし、なんかのんびり屋揃いだから、居心地いいんだよ。じゃ、三浦さん、頑張ってね。」


そう言って、穏やかな笑顔を見せると岡野くんは鞄を肩に担ぐと、教室を出て行った。その後ろ姿を見送りながら、フッとため息をついた私は


(いけない、急がないと。)


我に返ったように思いついて、慌てて彼の後を追うように、教室を飛び出した。
< 3 / 26 >

この作品をシェア

pagetop