イケメン、お届けします。【注】返品不可
衝撃の事実?


「パパっ! お母さんがいなくなちゃったの!」


オオカミさんは、あっけに取られた様子で男の子を見下ろしていたが、その身体を軽々と抱き上げ、プレスの効いたハンカチで涙と鼻水を拭ってやった。


「大丈夫だ。すぐにお母さんを探してやる」

「ほんと? さすがパパだね!」


ほっとしたのか、男の子はニコニコ顔でオオカミさんの首にしがみつく。


(どう見ても、親子……)


普段から子育てに協力しているのだろう。
抱いている姿も様になっているし、違和感がない。

結婚していながら、よその女にキスするようなロクデナシでも、父親は父親だ。
奥さんと鉢合わせする前に帰ろうと背を向ける。


「オオカミさん、今日はどうもありがとうございました。わたしは、ここで失礼しま……」

「待て待てっ! パパじゃない! 俺は、この子のパパじゃない!」


必死の形相をしたオオカミさんに腕を掴まれ、引き留められる。
しかし、泣き止んだ男の子が再び泣き出した。


「うそだー! パパだもんっ! お母さんが、これはパパだって写真を見せてくれたもんっ!」

「せっかくの休日なんですから、家族とお過ごしください」

「だから、ちがうと言ってるだろうっ!?」

「なんで怒ってるの? パパぁっ」

「いや、怒っているわけじゃない。ただ、あかりと話をしているだけだ」

「早くお母さんのところへ行きたいーっ!」


必死に宥めるも、効果なし。

端から見れば、わたしたちはグズる子どもに手を焼く新米夫婦にしか見えない。
通りすぎる人たちの「あらあら大変ねー」と言わんばかりの、同情に満ちた生温かい視線が痛い。

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