クールな歌手の揺るぎない思い〜この歌が君に届きますように〜

修哉side


今日はいろいろあって俺も精神的に疲れた。

シャワーを浴びながら思う。

風呂で寝るくらい疲れてるのに、あんなに泣いて大丈夫なのか?熱とか出さなきゃいいが。

俺は何を怖がっていたのだろう。
小春があんなに自分の事のように大泣きしてくれた事で、ずっと心の奥底に燻っていたドス黒い感情が浄化された気がする。

晴々しい気持ちだ。

小春に母親の事を言うのをずっと避けていた。出来れば話さないままでいれたらと思うほどだった。

あの頃の俺は後悔ばかりで、
もっと早く見つけていれば助けられたんじゃないかとか、
もっとちゃんと家に帰っていれば、話を聞いてあげていれば母は死ななくてよかったんじゃないかと、
救えなかった事を自分のせいにして俺が殺したようなものだと苦しみ悩んでいた。

それを誰かに曝け出すのが怖かったし、親がいない事を知られるのが辛かった。

小春には意図しないタイミングで話してしまったが、まるで自分の事のように大泣きした。

あの頃、本当は俺も小春のように泣いて喚いて誰かに救って貰いたかったんだきっと。

誰にも頼れず泣く事さえもできず、
ただ世界を斜め下から睨みつける事で自分を保っていたちっぽけな俺は、

世の中は他人に無関心で誰も助けてくれないと勝手に思い込んで殻に閉じこもっていたのは俺自身で、

きっと手を差し伸べれば握ってくれた大人だっていたはずなのに俺自身が拒んでいただけなのかも知れない。

小春の涙のおかげで、あの頃の俺が報われた気さえする。

これからはもっと気楽に話せるし話したい。今まで隠し続けた母親事を、どんな人で何が好きだったか、どう生きてどう死んでいったのか、小春だったらちゃんと受け止めて一緒に分かち合ってくれるはずだ。
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