クールな歌手の揺るぎない思い〜この歌が君に届きますように〜

5 彼女と彼の繋がる思い



バイト開始5分前にギリギリ滑り込む。

「おはようございます。よろしくお願いします。」

今夜の相方は近くの大学生、片山君だ。
明るい金髪に近い髪色で、
身長は175センチくらいの人懐っこい、
子犬系男子だ。

「あっ。小春さん。おはようございます。
やった。今日は小春さんと2人、ラッキーディですね。」
気の利くいい子なんだけど、
いつもテンションがMAXで、ちょっとチャラい感じがする。
どう扱っていいか分からず、
正直アンラッキーディなのだけど。


今日は金曜の夜の為、
夕方の時間帯はいつもよりはお客が少ない。

近くの居酒屋やレストランで食事をする人が多いからだ。

駅前のコンビニとあって、
小さめで品数も少ない為、電車に乗る前の
学生や社会人の常連客も多く出勤や退勤時間帯が1番混む。

外には広場があり、
花時計がモニメントとして置かれている為、
待ち合わせ場所として活用する人が多い。
そのため、ベンチやテーブルが置いてあったりする。

もし、先輩が早く来ても前のベンチで待っててもらえばいいかなぁ。

レジに入りながらふと思う。

お客が途切れてきた。
少し店内の補助をしながら店内を回る。

「ねえねえ。小春さん、ちょっとちょっと。」
ガラス窓側の本棚の補充をしていた片山が、こっちに向かって手招きをする。

「どうしたの?」

「あそこのベンチにモデルみたいな
ちょーイケメンがいるっす!」

「足長っ!!
マジカッコいい。
オーラまじヤバくないですか⁉︎
リスペクトっす。」

ちなみに彼の口癖はリスペクト。

意味わかって使ってるのかなぁっと、心配になりながら、
ハハ…と困り顔で軽く苦笑いする。

何気無しに10メートルくらい先のベンチに目を向ける。

「えっ!!」
驚き、思わず声が出てしまう。

不思議に思った片山がすかさず、声をかける。
「どうしたっすか?
もしかして、知り合い⁉︎」

片山は目を見開いて、
小春とベンチに座って仕事をしてる風情のイケメンを交互に見比べる。

「マジっすか⁉︎
凄くないですか、小春さんもマジ、
リスペクトっす!」

急いでお店の時計を見る。
まだ9時を少し回ったばかりだ。
10時まであそこで仕事でもするつもりだろうか。
終わりまで長過ぎるんじゃないかと焦る。

そんな小春の気持ちを気にも止めず、
片山のテンションはMAXになり、
修哉に向かって、ジャンプしながら大きく手を振り出した。

慌ててそれを止める。
「か、片山君。ダメだよ。仕事中だから、落ち着いて。」
手を急いで下ろさせる。

「すいません。」
あっ。お客様だ!グッドタイミング。

「片山君、お客様だよ。早くレジに戻ろう。」
片山の背中を押して急がせる。

先輩がこっちをみてる気がして、ペコリと頭を下げて、急いでレジに入る。

5〜6人程の客が並び、しばらく仕事に集中する。

やっと、客が途絶えてひと段落。
残っていた補充の作業に戻ろうとすると、片山が声をかけてきた。

「もしかして、ハイグレードイケメンは小春さんの彼氏っすか?」

「ま、まさか。そんな恐れ多いよ。」
慌てて否定する。

「だって、夜10時まで仕事終わりを待つってなかなか出来ませんよ。
これは絶対脈アリですって。」

「いいなぁ。ちょっと嫉妬しちゃうなぁ。」

「えっ。片山君ってそっち系⁉︎」
思わず、心の声が漏れてしまう。
「そっち系ってどっち系っすか?」

「えっーと。イケメン好きって言うか…」

「俺、小春さんもイケメンさんもどっちもリスペクトっす。」

リスペクトの使い変だって。
心の中で片山君に注意しながら、
これは誤解を解かないとっ、
と焦る。
「えっーと。彼は中学の時の先輩で、この前偶然に会っただけで…ただの先輩、後輩だよ。」
自分で言いながら、少し気持ちが落ちるのを感じる。

「えっ。だって、小春さん地方出身でしょ⁉︎
なのにこっちで、偶然会うなんて!!
すごくないですか⁉︎
まさにドラマっすよ。」
< 23 / 172 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop