クールな歌手の揺るぎない思い〜この歌が君に届きますように〜

突然の再会


スタジオABCは弁当屋から歩いて10分ほどの場所で、ここら辺では1番大きなビルだった。

入り口に入ると受付があり、綺麗な受付嬢が2人並んで座っている。

「こんにちは。
まごころ弁当の者ですが、お弁当の数が足りてなかった様で、急いでお届けに来たのですが」

「お世話になっております。
スタジオ5でご用件を承っております。
恐れ入りますが、直接お渡しをお願いします。
場所はそちら右のエレベーターを上がって15階になります。」

通行証を渡され、

和かな笑顔の受付嬢から綺麗な動作で指挿した方にエレベーターを見つけた。
「ありがとうございます」

頭を下げて足速にエレベーターに向かう。
ちょうどその時、2人の長身の男性がエレベーターを待っていた。

2人共、180センチ以上はありそうでスラリと伸びた手足がスタイルの良さを感じさせる。

1人は黒縁メガネにネービーの背広を着ていてサラリーマン風情。優しそうな目元が好印象なイケメンだ。

もう1人はサングラスをかけ、一瞬怖そうな印象を受けるが、白いTシャツに紺のジャケットを羽織り下はインディゴのジーンズと爽やかな雰囲気を醸し出している。

少し長めの前髪がサラッと揺れると、只者では無いオーラが感じられる。
もしかして、芸能人⁉︎

普段から余り芸能人には興味の無い小春でも
この只ならない空気を感じ取り、 
一歩後ろに後退し、出来るだけ目立たない様に俯いてその2人の後ろに並びエレベーターを待つ。

何気なしに、前方2人の話が耳に入ってくる。

「アルバムの曲の進み具合どうですか?」
1人のメガネをかけたマネージャーらしき男が話しかける。
 
「…なんとか間に合わせるつもり。」
サングラスの男は不機嫌そうに答える。

「12曲全部新しく作るってのは、やっぱ無理ありませんか?
なんならインデーズの時の歌をアレンジして足してもいいと思いますよ。」

「…もう5曲は出来てるんだから、来月までにあと残り作ればいいんだろ。」

「発売日まで後、3ヶ月しかないんですよ。大丈夫ですか?」
心配そうなマネージャー風の彼にサングラスの男は一瞬ギロっと睨みをきかせて、無言で腕を組む。


余り穏やかでは無い空気がこちらにも伝わり、出来れば同じエレベーターは避けたいと思うほど、心が騒つく。

そんな気持ちを知ってか知らずかエレベーターは無情にも一階に到着し、3人の他に乗る人も居ない。

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