夏は愛と青春の季節













ポケットのタバコの空き箱を握りつぶし、軋む廊下を進んだ。


鈴城さんが僕を思い出すことはないだろうけれど、儚く掬えば零れる光のつぶのように彼女は僕にとって繊細に関わらなければいけない人だ。



感情を露わに想いを伝えることは出来ない。
今までも遠くから見守っているだけ。



話したり、ましてや彼女に対して……。



これ以上は歯止めが効かなくなる。


危険だと、自分でも重々分かっていた。それでも僕は図書室に足を運んでいた。


恐ろしく操縦不可能な感情にかき乱されながら、静まり返った書架の間を抜ける。




窓から差した夕陽に照らされた鈴城さんの姿があった。机に伏して寝息を立てている。



指通りのよい髪を優しく梳かし、起こさないよう隣に腰を下ろした。


頬にまつ毛の影ができている。陶器のように白い肌、ほんのり色づいた頬。作り物のように尊い寝顔だ。


「思い出してくれないのかな、ユウ。………思い出さない方がいいか」




こんなにも近くにいられることが幸せでたまらない。罪悪感と多幸感に押しつぶされそうなのに、一度外れた箍は、もう、締められない。



「どうか、僕を赦して……。ユウからもうなにも取り上げないから、だから、こわがらないで……お願い」


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