その騎士は優しい嘘をつく
アンネッテという女性
 アンネッテ・ノードは魔導士団に所属する女性である。二年ほど前、彼女が二十歳のときに騎士団に所属しているハイナーとお付き合いを始めた。アンネッテが彼を気になり始めたのが物事の始まり。
 アンネッテは魔導士団の中でも、貴重な治癒魔法を得意とする魔導士だった。だから他の魔導士のように魔物討伐のために遠征には出ない。治癒院と呼ばれる場所で、怪我をして戻ってきた騎士や魔導士たち、そして民たちの治癒に専念していた。
 あまり外を出歩かないアンネッテはとても白い肌をしていた。そして、その治癒に専念する姿は、怪我をした騎士や魔導士、そして民たちからは女神様のようだとも表現されていた。治癒の女神、それは彼女が裏で呼ばれていた二つ名でもある。
 彼女のことをそう裏で呼んでいるのには、他にも理由はある。穏やかな笑み、そして気遣いと優しさ。怪我だけでなく心も癒してくれると、そう評判であったため。

 ある日、魔物討伐の遠征から戻ってきた騎士たちの中にハイナーの姿があった。彼は酷い怪我をして戻ってきていた。
 怪我人の治癒をしながら、アンネッテの耳に入ってくる騎士たちの会話。そこから知ることのできる彼の姿。
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