その騎士は優しい嘘をつく
不器用な男
 ロルフと話をした次の日。ハイナーは慌てて治癒院へと足を運んだ。そこに、アンネッテがいると思ったからだ。だけど、そこに彼女の姿は無かった。
 さらに慌てて、事務官であり彼女の親友でもあるカイリの元へと向かう。

「アンはどうした?」
 不躾に事務官室の扉を開け、カイリの姿を見ると同時にそう言葉を投げつけた。

「あら、ハイナーさん」
 カイリはハイナーとは逆で、とても落ち着いていた。

「アンはどうした? なぜ、治癒院にいない?」

「アンは、昨日から休団していますよ。もしかして、ハイナーさん、ご存知なかったのですか?」

「何? 休団?」

 この様子ではハイナーは彼女が休団することも、したことも知らなかったんだろうな、とカイリは思った。

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