その騎士は優しい嘘をつく
 それを聞いたロルフは、妹から聞いていた話と、彼自身が知っている情報とを総合的に組み合わせた結果。
「それって。アンネッテの姉貴の旦那じゃないのか?」
 という結論にいきついた。

「なんだって?」
 と言いながら、ハイナーはつぶれたパンを噛み千切る。

「いや。お前の話を聞いて思い出したんだけど。アンネッテの姉貴の旦那って、有名なレストランで働いてるって聞いたことがあるんだよ。だからさ、もしかして、アンネッテはその義理の兄に料理を習ってたんじゃないのか? その、お前さ。アンネッテの料理は、たまに失敗するときがあるって愚痴ってただろ」

 だがそれも、愚痴とみせかけたただの惚気だろ、ともロルフは思っていた。

 噛み千切ったパンを咀嚼していたハイナーは目を細めて、それを飲み込んだ。義理の兄がレストランで働いている、ということはハイナーも彼女から聞いたことはある。だから、今度、一緒に食べに行きましょうと、アンネッテは口にしていた。

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