もう、キスだけじゃ足んない。

過去と恋模様


【桃華side】


「杏とふたりで、よかったの……?」


どこか一歩引いたような、でも気になると言わんばかりの目に見つめられる。


「やっぱ、バレてた?」


「うん……というか、遥も、知ってると思う」


「まーじーかー」


私の大好きで大切な自慢の妹、橘胡桃の彼氏であり、私の幼なじみでもある、弓削遥。

そしてその遥の双子のお兄ちゃん、弓削杏に。


私、橘桃華、片思いしてます。


「いつから気づいてた?」

「んー……なんとなく、だけど、中学のときからかな」


「まじか……」


必死に隠してたつもりだったんだけどなぁ……さすが双子。やっぱり分かっちゃうか。


「私といっしょだね、桃華」


「え?」


「私もだよ。
私も遥のこと、中学のときから好きなんだよ」


「えっ、まじで!?」


帰ってきてからまだぜんぜん経ってないのに、あたし、どんだけ「まじで」使ったかな……。


「そっかー、中学かぁ……。
ちなみにだけど、具体的な瞬間とかは、覚えてる?」


「んー、さすがにそれは覚えてないけど、たぶん、遥の心の声が聞こえ始めたときからかな」


無自覚だったけど、あれが遥への気持ちに気づく、きっかけだったんだと思う。


「そっか……」


ねえ、胡桃。

双子って、好きな人を好きになる瞬間も同じなのかな。


「あたしもだよ」

「え?」


「あたしもいっしょ。
杏を好きになったの、胡桃が遥の心の声、聞こえるようになったときから、だよ」
< 96 / 323 >

この作品をシェア

pagetop