最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
陽芽の両親は、ここイギリスでそこそこ稼ぎを上げていたと思われる。

ここはロンドン中心地から少々距離があるとはいえ、充分高級住宅街の部類に含まれる。

『あなたのご両親が素敵なリフォームをしてくれていたおかげで、私はそのまま使わせてもらっているの。ほら、見てこのキッチン』

落ち着いた木製の調理台や食器棚は、アンティークのような深い味わいを放っている。

「素敵なお家」

ぽつりと漏らした陽芽の感想を通訳すると、イザベルはにっこりと笑って陽芽をクローゼットに案内した。

『この家を買うことになったとき、あなたのご両親から譲り受けたものがあるの』

そう言って見せてくれたのは、日本的な装飾金具が施された桐の衣装箱だ。

イギリスでは滅多にお目にかかれないその箱を、イザベルはゆっくりと開け、中を見せる。

「これは――」

「わぁ……!」

俺と陽芽は揃って感嘆の声を漏らした。入っていたのは、白いたとう紙にくるまれた着物だ。

深い紅と黒の地色に、金や白の花々が描かれた、きらびやかながらも重厚な振袖だった。

『あなたのお母さまからこの着物を見せてもらったとき、あまりの美しさに涙が出てしまったの』

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