最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
秘書が席を外している隙を見て、こっそりと怒りを爆発させる。

もはやその感情が嫉妬だということは、火を見るよりあきらかで。

俺が彼女に執着している事実は、不本意ながら認めざるを得ない。

女性的な好みを言えば、百合の花のような、清楚でたおやかな女性が好きだ。

陽芽が該当するかと聞かれればノーで、異性として意識したことはまったくない――と思っていたのだが。

「百歩譲って……愛らしい、か?」

そういえば以前、彼女をチワワと形容したことがあったか。

チワワはかわいい。彼女への感情を同じ理由で片付けられないだろうか?

子どもの頃、叔母の飼っていたチワワを触らせてもらったことがある。人懐こくてとてもかわいいチワワだった。

抱いてかわいい、じゃれてかわいい、キスしてかわいい。一緒にベッドに入って眠ったことも覚えている。

……いや、ベッドはダメだろう、ベッドは。

途端に脳内でチワワが陽芽に置き換わり、赤面する。

「……勘弁してくれ」

俺は携帯端末をそっと手にとり、ダリルとのチャットアプリを開いた。

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