迷彩服の恋人
しかも先日の日曜日は、飲み会の翌日で疲れているだろうに…「以前から言っていたことだし、僕が望月さんと楽しみたいから。」と、私の推しのBlu-ray鑑賞会を決行してくれた。

【土岐さん、こんばんは。
台風発生しましたね。私もスマホのニュースで見ました。
状況掌握!大丈夫です!
出動要請、無い方が平和ってことなので良いですけど…
もし…そうなったら、行ってきて下さい。
私は、土岐さんが怪我とかしないように
祈りながら待ってますから。
無事に帰って来て下さい。】

ヴー。

【望月さん。やっぱりあなたは優しいですね。
望月さんからの言葉があれば、僕は頑張れます。
ありがとう。
もし災害派遣に行ったとしても…必ず帰って来ます!
そして今度は、長時間出掛けましょう!】

土岐さん、優しいのはあなたの方ですよ。
私も、あなたからの言葉があれば大丈夫です!

彼の優しい言葉で心を満たしながら、私は夢の世界へ落ちていった。



土岐さんから【今度は長時間出掛けましょう!】というメッセージをもらってから、3日が経過したこの日は…台風の話題だけで一日過ぎそうなぐらい、会社のどこに行ってもその話を耳にする。

静岡やこの辺りに一番接近するのは明後日の予想だけど、念のためということで…うちの会社は明日から3日間テレワークに切り替えるそうだ。

「今回の台風、静岡直撃っぽいですよね。」

営業のフロアで、チームメンバーの立川くんと昼食を取る。
ちなみに、朝香先輩は外でランチしている。

「よし、カラーチェンジ・パッケージの作成依頼終わり。ご飯食べて、続き作らなきゃ!」

「そういえば、望月さん。最近昼休みに何か作ってますよね?何作ってるんですか?」

「ミサンガ。」

「都ちゃん、どう?ミサンガできそう?」

「この昼休みで完成します。でも…結花先輩、本当に良いんですか?私の届けものまで。」

「いいのよ、向こうが私を呼んでるんだから。それぐらいのパシリはさせるわ。」

志貴さんから「会いたい。」と連絡があったようで仕事終わりに駐屯地に行くらしい。それで土岐さんへの贈り物を託すことにした。

「…それにしても、良い発想ね。"ヒートパックに感温インクでイラストを()いて印刷して、子供も楽しんでご飯の出来上がりを待てるようにする"なんて…。」

「この企画にはほんとに驚かされました。…でも〝大切な人〟に温かいご飯食べてもらいたいですもんね。」

「えっ?」

「最近の望月さん、やる気みなぎってるから彼氏か好きな人できたかなって。」

恐るべし、立川くん。

そんな話をしながらミサンガを編み、昼休みを過ごした。



【望月さん、ミサンガありがとう。
要請はまだ出てないけど、おそらく行くことになるので
お守りとして、ありがたく持っていきます。
今から本当に予断を許さない状況だから
望月さんやご家族も気をつけて。
あと…。気持ち、我慢しすぎないで。
つらい、寂しい…僕に言いたいことあったら
メッセージしておいて下さい。
返信は、落ち着くまで絶対にできないけど…
見た時に全部受け止めるから。】

土岐さん――。
やめて下さい…泣いちゃうから。
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