アゲハ蝶は、クローバーを一人占めしたい
「え……知ってたの?」

「知ってた。
だって、これ…ペアのアンクレットだよ。
こんなの、四葉がするなんてあり得ない。
なんか裏があると思ったから、鳳雅に聞いた」

「え……ペア……」

「そうだよ。
鳳雅も、同じのしてる」

「嘘……」
四葉は信じられない思いで、揚羽を見る。

「四葉は酷いなぁ。
四葉は僕だけのはずなのに……他の男とのペアなんて身に付けて……!」

そう言いながら、揚羽はアンクレットを外した。
そしてサイドテーブルの上の灰皿にアンクレットを入れた。

「揚羽くん?」
「四葉、見てて?」

「え………」

揚羽はライターを取り、何の躊躇もなく火をつけた。
アンクレットは、あっという間に燃えて灰になったのだった。

「フフ…あーあ、なくなったね(笑)」

「………」


どうして、笑っていられるの………?
目の前の揚羽が、恐ろしくて堪らない。


「四葉」
「は、はい!!」
思わず、ビクッとして肩に力が入る四葉。

「僕が、怖い?」
「こ、怖い……」

「嫌いに、なった?」

四葉は、ゆっくり頭を横に振った。

「へぇー、それでも僕のこと好き?」
「………好き」

「へぇ……嬉しいな…」
揚羽は、再度四葉を組み敷き頬をなぞった。

「揚羽くん」
「ん?」
「揚羽くんが怖い人なのは、わかってるよ」
「うん」
「それでも、好きだよ」

「うん…
…………さっきの言葉、撤回しようかな…」

「え?」

「教えてあげるよ。
本当の、都筑 揚羽を━━━━━━」

そう言って、四葉の口唇を塞ぎ貪った。


━━━━━━━━━━━━━

「━━━━━はぁはぁ…揚羽く……もう…だめ…」
「ダメ……僕はまだ…全然、満足できてない……!」

先程から何度も抱かれ、ぐったりしている四葉。
それでも揚羽は、四葉を求めていた。

「教えて、くれるんじゃないの……?
本当の……揚羽くん…」

「…………今まで、四葉を傷つけた奴等……」

「え?」

「今どうなってるか、知ってる?」

不意に言った、揚羽。
妖しく微笑んでいた。

「し、知らない……」


「全員、都筑組の奴隷だよ……!」


「え……」
(何を言ってる、の……?)

「中学の時に四葉を虐めた奴、高校の時に四葉を犯そうとした奴、四葉を勝手に出逢い系に登録した奴……
あ!文人も」

「え……!?文人くんは、もう私達の前に現れないってことで解決したんじゃ……」

「そんな甘いこと、僕はしない。
だから、いつも言ってるだろ?
四葉を傷つける奴は、生きる価値がないって。
まだ生きてるだけでも、感謝してほしいよ」

いたって普通に言う、揚羽。
なんて、恐ろしい人なんだろう。

“奴隷”なんて言葉を、普通に使いそれをさも普通のことのように言うのだから。

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