魔法の手に包まれて
 目が合った。

 陶芸の先生だと聞いていたから、もっと年配の人だと思っていた。でも目の前にいる男性はしのぶよりも少し年上の、そう、二十代後半の男性に見える。

「こちらこそよろしくお願いします。工房主の石川(いしかわ)彰良(あきら)です」
 彰良は名刺を差し出してきた。それを両手で受け取った千夏だが、残念ながら千夏は名刺をいうものを持ち合わせていない。

「すいません、私。名刺を持ち合わせていなくて」

 いえいえ、と彰良は年配のおばちゃんのように手を振っていた。その行為が、一気に彼との距離を近づけたようにも感じた。

「どうぞ、中にお入りください」
 外から覗き見ることができなかった、謎のすりガラスの向こう側の世界へと足を踏み入れる。
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