離婚するはずが、エリート警視は契約妻へ執愛を惜しまない~君のことは生涯俺が守り抜く~
その日、朝から求められてすっかり寝過ごした私の枕元に、永嗣さんが朝ごはんを持ってきてくれた。
百さんはお休みのはずだから……
「え、もしかしてこれ、永嗣さんが?」
「口に合えばいいんだが」
和食ばかりだったから、あまりイメージになかったいわゆるイングリッシュ・ブレックファースト。トーストと目玉焼きに、カリカリのベーコンにソーセージ、ハッシュブラウンにベイクドビーンズ。フレッシュオレンジのジュースに、温かなミルクティーまで。
思わず反応して「ぐう」と鳴るお腹に頬が熱くなる。は、はずかし……!
永嗣さんはなぜか嬉しげに私のこめかみにキスをする。
「可愛い」
そんなふうに言われて──私は余計に頬が熱くなる。誤魔化すように私は永嗣さんを見上げた。
「あ、あの、美味しそうです。いただきます……の前に、服を着たいのですが……」
布団を胸まで持ち上げて身体を隠していた私の訴えに、永嗣さんは「ん?」と首を傾げた。
「? あの、服を」
「どうせ脱ぐからなあ」
「……!?」
永嗣さんは無言で微笑んで、私の横に座る。それからスプーンにベイクドビーンズを乗せて私に突き出した。
これは。
「風香。ほら、あーん」
優しすぎる声で彼が言う。
目を瞬く私の口元に運ばれたそれを、反射的に口に入れて咀嚼して──そんな私を、永嗣さんは満足げに見つめていた。
どうしよう、私、顔すごい赤いと思う……
「ああ、そうだ」
頬が真っ赤だろう私に向かって、なんてこともないように彼は言う。
「夕方から出かけたいのだけれど」
「っ、は、はい。いってらっしゃい」
「風香も一緒に」
そう言って今度はソーセージを私に食べさせる。
「わ、私も?」
「そう」
それまで、と永嗣さんが笑った。
「それまで──俺と遊んでいようか」
何をして? とは、こう、なんとなく怖くて聞けなかった。