妄想腐女子の恋愛事情  倉橋琴音と影山海里

想定外の展開

<観覧車での告白>

観覧車はゆっくりと動き出し、
上へ上へと上昇していく。

琴音は悩んでいた。

<好き、愛している>

違う、違う、そんな陳腐で、
使い古されている言葉を、
使いたくない。

観覧車は、一番上まで上がっている。

時間がない!

琴音、いやトキが動いた!
いきなり、
香山教授の膝に座ったのだ。

香山教授が驚いたように、
目を見開いた。
「何を・・・?」

トキは、子どもがすがるように、
首に腕をまわして、抱きついた。

「このままで・・・」
トキが耳元でつぶやいた。

琴音のシナリオでは、
ここで、香山教授が声を荒げて
<止めなさい!!>
というはずだったが

なぜか香山教授は、トキを強く
抱きしめた。

ええええ?・・

想定と違うんですけど・・・

「あの・・拒否で・・・」

琴音が、少し体を離した時に、
その手首をつかまれた。

香山教授の唇が、トキの唇に触れた。

ああ、ああああ・・・・・
トキは目を閉じた。

唇が少し離れたが、
今度は角度を変えて、深く合わさった。

舌がすくわれ、ゆっくりと絡んでくる・・・

トキではなく、現実の琴音は、
目を開けた。
地上までもうわずかだ!!

係員の姿が視界に入った。
グワンと、
観覧車が止まろうとして揺れた。

景山の腕が緩んだ隙に、
琴音は、体を離そうとした。
その勢いで、前の座席との間の床に、座り込んでしまった。

ガチャン
外の止め金具を外す音が響く。
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