婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子に溺愛される運命だったようです!
予想しなかった出会い
「……はあ、またか」

 そんな誰かの呟きが聞こえる、疲れ切った身体は重くて指一本動かせない。すぐにそんな事はどうでもよくなって、また深い夢の中へと落ちていった。


 ……ああ、温かい。こんなに温かいのはいったい何年ぶりくらいだろうか? そうだ、昔は夜になると父や母がこうして優しく抱きしめてくれて、それだけで朝が来るのが楽しみだった。
 大きくなって一人で寝るようになっても、時々アンネマリーが甘えて私のベッドに潜り込んできて抱き着いてきていたっけ? 
 身体に感じる温もりに懐かしい思い出を重ねていると、すぐ傍からため息が聞こえてきた。

「全く吞気な奴だな、こんな状況でぐうすか寝ていられるなんて、本当に年頃の娘なのかよ?」

 聞き慣れない男性の声、一瞬で頭が覚醒したのだがすぐに自分が置かれている状況を見てパニックになる。私が家族だと思って抱きしめていたのは見たこともない男性、その相手はほとんど服も着ていなかったのだから。

「き、きゃあああああっ! 誰なの、貴方は。ここは私の……!」

 私の部屋だと言いかけて思い出す。ここが今まで暮らしてきたファーレンハイトの家でなく、辺境地のオンボロ屋敷だという事を。
 でもここは私の療養用に用意されていた屋敷のはずだ、使用人がいるとは聞いたがこの男性がそうとはとても思えなかった。
 なのに……

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