婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子に溺愛される運命だったようです!


 昨日はシーツを洗うだけで精一杯で、疲れて眠ってしまったのでレーヴェが風呂を用意してくれたのは本当に有り難かった。浴室に来てしまえばロッテも迷いなどどうでもよくなり、早く温かなお湯で身体を清めてゆっくりと湯船に浸かりたくなっていた。
 オンボロ屋敷ということもあり浴室は綺麗とは言えなかったが、ロッテのためにレーヴェがある程度片付けていてくれたようだった。

 ふわりとしたスカートのドレスをゆっくりと脱いで、浴室に入るとその湯船の温度を確かめる。湯はちょうど良い温かさだった。
 用意してあった石鹸を手にとり、丁寧に泡立てて植物を乾燥させて作られたスポンジで身体の隅々まで洗っていく。ゼーフェリング王国の庶民の間ではごく普通の身体を洗う道具なのだが、侯爵令嬢であるロッテには馴染みがなく上手く使えなくて時間がかかってしまった。

 今まで使っていた香油もここにはない。彼女の白くきめ細かい肌や流れるような美しいプラチナブロンドの髪を手入れする化粧品だってありはしなかった。
 それでもロッテはこのボロ屋敷もレーヴェの事も嫌だとは思わなかった。レーヴェはロッテを居ないもののように扱ったりしないし、隙間だらけのボロ屋敷だって彼が隣にいてくれたから暖かかった。

「もっと、一緒にいれたら良かったのに……」

 決して本人には言えない言葉。自分の立場を考えれば父の用意した別荘で、これから先は大人しく過ごした方がいいのだろう。そんなことはロッテもちゃんと分かっていた、それでも……
 少しだけ我儘を言えたら、そう思うのに今まで我慢させられるのが当たり前だった彼女にはそうすることが出来なかった。


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