モナムール



「言ったでしょう。次は一緒にお酒飲みましょうって」


「うん。言ってたけど……」



時刻は二十三時半。dernierは午前零時に閉店する。しかし廻くんはバーカウンターの中から出てくると、お店の入り口に向かって看板を下げてきてしまった。



「今日はもう閉めるので、一緒に飲みましょう。もちろん俺の奢りです」



"私"から"俺"に変わったということは、これはあくまでも仕事ではなくて、プライベートとして私と飲みたいと言ってくれているのだろうか。



「……うん。私でいいなら」


「中野さんじゃなきゃダメです」



嬉しそうに笑った廻くんはそのままカウンターの中に戻り、ウォッカのボトルを取ると滑らかな手つきでカクテルを作ってくれる。



「どうぞ。スクリュードライバーです」


「ふふっ、私を潰すつもり?」


「まさか。いくら"女殺し"でも、ザルの中野さんには手も足も出ません」


「馬鹿にしてない?」


「むしろ褒めてます」



小気味良いやりとりに笑いながらグラスを受け取る。


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