こいろり!



ガチャン。と、力が抜けた手からスマホが地面に落ちた。
こんな人混みの中で(さら)われた?ガヤガヤと人の声で溢れる映画館の広場で、1人唖然と立ち尽くす。




"ハナカガサラワレタ──?"



その事実を理解するのに、時間がかかった。理解しても、焦りと衝撃が頭の中で交差する中どうしていいか分からなくて体が動かない。






「あれ、泰良じゃん?どうしたん?」


聞き覚えのある声がしてハッとした。




「……あ、赤司?」

「何だよ。結局、お前等も映画観に来たん?何観んのー?って華ちゃんは?」


振り替えると赤司とその彼女が立っていて、赤司が華花を探すよう辺りを見回す素振りを見せる。



「…………い、いなくなった」

「えー、マジかよ!?んじゃ、迷子の呼び出しかけなきゃ……って、お前顔色ヤバイぞ?」

「スマホ落ちてるよー!泰良くんの?ぎゃー、画面割れてんじゃん!」


赤司に続いて、横からひょいっと顔を出す彼女が俺に「はい」とスマホを手渡してきた。



「なんだよ、華ちゃんと連絡つかねーの?」

「……あいつ……拉致(らち)られたっぽい」

「はぁっ???どういうっ」

「華花のスマホから着信あって……で、出たら知らない男で、俺の名前言ってきてお前のお姫さまを預かったって言って……俺、行かなきゃ…」


ふらりと足を出したところで、少し慌てた赤司が俺の腕を掴んだ。


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