こいろり!



周の胸から顔を出した華花の顔は、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていた。
大きな目は真っ赤になって、擦った目蓋は少し腫れているのが分かる。




「華花お嬢様、帰りましょう」


周の言葉に華花が小さく頷いた。
その小さな背中に周の右手が回されて、車へと誘導される。
後部座席に乗り込んた華花は俯いたままで、こっちを見ようともしなかった。

エンジン音は無い。静かに発車される黒の高級車をただ唖然と見送った。




「はぁ?なんだよ、あれ……感じワリー」



大人には大人の事情ってのがあるのかもしれねーけど。
ふざけんなよ、最初から勝手に決めつけんなよ。子供だって大人の顔色見て空気読んでんだよ。



「ちっ、後味わりぃな」


結局、俺は金持ち一家のに振り回されたってことなのか。ただの暇つぶしかよ。

残された俺は、荷台の軽くなったチャリにまたいで家の方面へ向かった。


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