こいろり!



優しい思い出ってなんだよ。

俺が何も言い返せないでいるのを見て、小さな息を吐いた美魔女が言葉を続けていく。



「華花、祖母が亡くなってとても悲しんでるのよ。夜、ベッドの中で1人泣いてるし。あんな感じで明るく振る舞っているけど、まだ受け止めきれていないし、本当は心の整理ができていない状態なのよ」

「あ、あぁ?」

「だから、今日 泰良くんが来てくれて良かったわ。何も言わなくていいから隣にいてあげて欲……」





「ママ!泰良!お茶の準備が出来たわよ!」


丁度その時、華花がリビングのドアを勢いよく開けて入ってきた。
そのすぐ後ろに周もいて、台車からケーキと紅茶をテーブルに並べいていく。



「2人で何のお話をしてたのかしら?」


何も知らない華花がニコニコと笑顔を見せて首を傾げる。



「華花、泰良くん良い子ね。とても優しそうな男の子じゃない」

「そうでしょう?ケーキが崩れたらなおしてくれるし、おばあさまの所にだって連れていってくれたんだから!とっても優しいのよ!!」


華花と華花の母ちゃんが俺の話題で盛り上がる光景が視界に入る。


璃香子の言った通りだ。どう考えても当たり前だよな。

ばあさんが亡くなった今、お嬢様1人残れるわけがねー。
華花にはここに残る選択肢はないのだと、ただぼんやり考えていた。





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