先生、大嫌いです。ーあるふたりの往復書簡ー
3月10日

英里へ
携帯の番号を聞いておいて良かった。
家に戻ってから電話で話せる。
それでも毎日毎日、ずっと英里のことばかり考えてる。
英里のそばにずっといてやりたい。
仕事と、この距離が少しもどかしい。
俺が支えになれるなら、またいつでも呼んで。できるだけすぐに会いに行くから。
行けない時は電話する。メールも。

ごめんな、こんな大変な時に。
こんな状況で言うのは、卑怯な気がしたんだけど。本当は手を離すのが一番だって言い聞かせてたのに、できなかった。
俺の正直な気持ちを言いたくて、堪えきれなくなった。
断られたら、顔だけ見て帰るつもりだった。
俺の都合だな、結局。でも夢じゃないし、俺は真剣だから。そこは信じてほしい。
あと、20歳になるまでは何もするつもりはないから、英里もあまり煽るようなことしないで。

葬儀の時にそんなことがあったなんて、気付かなかった。
ご両親のことは、あまりにも知らなすぎて踏み込めなくて。こんなつらい思いさせるなら、聞き出せばよかった。
英里、誰が何を言っても、自分のことを「間違いだ」なんて思わないでほしい。
邪魔だなんて、俺は思ってないし、思わない。
自分の言葉で自分を傷つけないでくれ。
無理してまで自力で立とうとしなくていい。支えにくらいなるから。今は休んで。
英里が自分をどう思っても、俺はそばにいたいと思ってる。それは「今」だけじゃなくて、これからも。できるだけ長く。
何度でも言う。英里が、好きです。
できたら、いつか、英里の家族の仲間に入れてほしい。
だから、1人だなんて思わないでほしい。

好きに生きることには、賛成です。
今のうちに、好きなこと、得意なこと、嫌いなことも苦手なことも、色んな経験をして見つけていってほしい。
俺が出来る範囲のことなら、何でも手伝うよ。

これからは、こういうことは隠さないで教えてくれ。俺が、平気じゃない。
春休みに入ったら少し余裕ができる。会いに行くから待ってて。

孝行




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