先生、大嫌いです。ーあるふたりの往復書簡ー

2月2日

おばあちゃんへ

去年のお盆に2人で結婚の報告に行きましたが、式の日取りが決まったので招待状を持って2人で来ました。
今まで恥ずかしくて馴れ初めは報告していなかったけど、孝行さんは実は、高校の時の先生です。在学はかぶらないけど、大学の先輩でもあります。
もう高校卒業して8年近くたつけど、覚えてるかな？
高校2年の時に、入院した担任の代理で一度だけ三者面談を担当してくれた副担任の先生です。おばあちゃん、たくさん飴あげてたよね。帰りに「いい人ね、かっこいいね」ってずっと言ってたね。まさかその人が旦那様になるとは思いもしませんでした。
学生の頃は直接の関わりは多くなかったけど、忘れられなくて手紙を書いたら返事をくれたの。
それから手紙でやりとりしていて、おばあちゃんの葬儀にも来てくれたんだよ。気付いたかな？
私が大学を卒業するのも、仕事に慣れのもずっとそばで見守って支えて待っていてくれました。とても優しくて、大きな心で愛してくれる人です。
去年の4月から一緒に暮らしています。結婚式に先立って、私の誕生日に入籍も済ませました。

孝行さん、とても料理が上手なの。でも掃除は苦手みたい。私と逆。笑っちゃうね。
孝行さんとの生活は、すごく楽しくて心地いいです。
私も孝行さんにとってそういう存在になれならいいなと思っています。

身内だけで小さな式をします。いつもお世話になっている伯父さんたちを呼びました。連絡しないつもりだったけど、伯父さんと孝行さんに言われて、父にも一応連絡はしました。「おめでとう」って返事はきたけど、忙しいだろうから来ないと思うな。来られても、私も困るし。でもね、私と父はそれでいいと思ってます。
そういう事情は、孝行さんも孝行さんの家族もわかってくれているので心配しないでね。
むしろ孝行さんのご両親やお姉さん、弟さんがみんなで私を可愛がってくれて。孝行さんって温かいお家で育ったんだなって、実感しています。私におばあちゃんや伯父さんたちがいてくれたように、孝行さんには良い家族がいます。

孝行さんが私を大事に大事にしてくれるから、自分の家族をちゃんと作って大切にしていきたいの。
おばあちゃんも、よかったら見守って下さい。

秋場英里





END