儚く甘い
立ち上がると大きく体を伸ばす男。

こうしてみるとかなり背が高い。

みわが地面に座り込んだまま見上げていると男はみわの前にしゃがんだ。

「じゃあな。」
みわの頭にポンと手を置いてから、再び立ち上がり屋上の扉に手をかける。

「名前」
「え?」
思わず声をかけたみわ。
「名前、教えて?」
みわの言葉に少し驚いてから、男は「達哉。宝条達哉。」と答えて、去って行った。

みわはしばらく達哉の去った扉を見つめて動けなかった。
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