儚く甘い
隆文と裕介がしゃがんだ瞬間をついて、みわが裕介の背中に飛び乗る。
「おんぶ」
兄に甘えるようにおんぶの体勢に無理やり持って行ったみわは、満足げに笑う。
「まったく」
そう言いながらも裕介は軽々とみわをおんぶしたまま立ち上がり、階段を降りて母の待つリビングに向かった。
「あら、大きな赤ちゃんだこと」
そう言ってキッチンから裕介におぶわれてきたみわに笑いかける母。

「ほら、早く行かないと。」
母にせかされて、裕介はみわをダイニングテーブルの椅子に座らせた。

妹の体の軽さに、明らかに動揺してしまった気持ちは隠したまま、裕介も隣の椅子に座る。

明らかに痩せた妹。
父も同じだった。
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