儚く甘い
「みわ、あの人だけはやめときな」
「え?」
半ば強引に友達に連れて行かれた先は大学の構内にある食堂だった。
「京香が同じ中学だったらしいんだけど、地元じゃ有名だったらしいよ?」
「有名?」
みわを囲むようにして4人の女友達が、こぞって話し出す。
誰もが得意そうにしているのがみわは違和感を感じて仕方ない。

「宝条達哉。誰も手が付けられないような不良で、ほとんど学校に来てなかったんだって。両親は離婚してて、おとうさんに引き取られたらしいんだけど、かなりお金持ちで豪邸に住んでるんだって。学校にほとんど来てないのに、頭はよくて、気まぐれでうけるテストで5教科満点で主席になるくらいらしいよ。」
「だからみんなのこと、すごく下に見てるんじゃない?」
「やだー、性格悪いー。」
「・・・」
周りの女子たちが話をするのを黙って聞きながら、みわは、友達が得意になって言葉を発する口をじっと見ている。
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