儚く甘い
「ちゃんと楽しいことも、思い出も作らなきゃね。昔みたいに出かけたり、家族で食事をしたり。あたりまえだったことも、最近してなかったから。」
「あぁ。」
「さっそく家族でお花見行こうか。隆文、時間とれない?」
「とるよ。裕介にも連絡する。」

母は翌日、長年勤めていた会社に退職願を出した。
娘との時間を作ることに専念して、思い出をたくさん作ることに前向きになった。

隆文と裕介も、忙しく焦りすぎていた自分たちにストップをかけた。

時間はない。
それは変わらない。

自分たちの手にみわの命がかかっているという事実も変わらない。

でも、それ以上に大切な時間もある。
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