儚く甘い
『達哉へ』
そう書かれた封筒。
中に、新しく書いた手紙を丁寧に折り入れるみわ。
手紙の初めには『これがあなたへの最初で最後の手紙です。』と書かれている。

自分のいない世界を想像しながら書く手紙は苦しくてつらくて、悲しかった。

それでも、誰よりも大切な達哉にできることをしたい。

すべてを受け止めようとしてくれている達哉。
その達哉がみわのいない世界で生きると約束してくれた。
だからこそ、やるべきことがある。

『これがあなたへの最初で最後の手紙です。これからお願いすることは私のバケットリストの最後のリスト。それはあなたが愛する人と一緒に、あの公園の桜を見て、空を見上げながら微笑んでほしいということ。そして、リストの最後が終わったら私を懐かしい、少し甘くて少し切ない思い出に変えて、幸せな未来に向かって歩んでほしい。振り返らずに、前を見て進んでほしい。それが最後の私の願いです。』

みわは手紙に封をして、自分の机の一番上の引き出しに入れた。

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