儚く甘い
「この前おいしいって言ってくれたから、今日も唐揚げにしちゃった。」
「うれしいです」
不器用にみわの母の言葉に返事をする達哉を見て、みわが笑っている。
「お母さんね、達哉にもらった花、嬉しそうに大切に飾ってるんだよ?」
そういうみわに、達哉が手を伸ばして、みわの母を見ながらも、みわが歩き出すのを支える。
「だって、本当の息子からは花なんてもらったことないんだもん。死んだお父さんくらいよ?だからうれしくて。」
達哉はみわの母から当たり前のようにみわのバックを預かる。

「でも、もう気をつかわないでね?こうしてみわのこと支えてくれているお礼なんだから、これ以上何かをしてもらったら、私たちばちが当たるわ」
みわの母はそう言って、歩き方がぎこちないみわを見る。
「みわがこうして大学に通えているのも、達哉君の支えがあるからだって本当に思ってるの。ありがとうね。」
達哉がみわの体をしっかりと支えながら視線を返し、首を横に振った。
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