ひとつ、ふたつ、ひみつ。

＊
「淳史(あつし)、あんたね、いい加減千乃ちゃんに頼るのやめなさいよ。春から、もう高校生でしょ？」


おばさんが、呆れた表情をあっくんに向けながら、私とふたりで準備した朝食をテーブルに置いてくれた。


「はい、あっくん、靴下はここだよ」

「サンキュ、あ、ネクタイどこやったっけ」

「ネクタイは、昨日あっくんがほどいてから、その辺に放り投げちゃったから、たたんで机に置いてきたよ」

「マジ？また部屋に行くのめんどくせーな」

「私が取ってくるよ。待ってて」


そんな私たちのやり取りを聞いて、おばさんは深くため息をついた。


ここは、幼なじみの長岡(ながおか)淳史が、親子３人で暮らす家。

私、高槻(たかつき)千乃は、この家で居候している。