ひとつ、ふたつ、ひみつ。
はじまりは放課後に。
「「いってきます」」


はじまりの朝、私とあっくんは、ふたりで同時に家を出た。

私たちは、今日から揃って高校生になった。


「はい、いってらっしゃい。またあとで、入学式でね」


おばさんに見送られ、外に一歩踏み出す。

新しい制服はまだパリッとしていて、少し動きづらい。

この格好に目が慣れていなくて、変な感じがする。


顔を上げて、否応(いやおう)なしに視界に飛び込んでくる隣の家の光景に、私はとっさに目を背けた。


外にいても、朝の賑やかな声が聞こえてくる。

少し前まで、暗くて、シーンとしていて、人のいない入れ物のような建物が存在していただけだったのに。


本当に、人が住んでるんだ……。

昔、私が過ごしたこの家に。

私は立ち入ることが許されなくなった、この家に。


どんどん“当たり前”が変わっていくことに、不安が募っていく。
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