玉響なる風は、水とともに
「ただ眠らせただけじゃない!幸せな夢を見せているんだ!!彼女の、あの時の記憶を書き換えたね!そして、ボクが消えるまでは目が覚めないのさ!幸せな夢を見続けて、死ねるんだ。これ以上幸せなことはないだろ?……ボク、今から夢の中にいるこいつを消してくる……そうすれば、彼女は永遠に眠ったままだ!」

それだけ言うと、男性は姿を消す。次の瞬間、葉月は「そんな……」と絶望した、と言わんばかりの表情をした。

……が、葉月はパニックにならないように深呼吸をすると静かに周りを見渡す。

「おい!どうするんだよ!!」

「僕に聞かないでくれるかな?僕も分からないんだ!」

レオナードとヴィンセントが騒いだことにより、周りはパニックになりかける。そんなパニックを落ち着かせたのは、「うるさい!!」と葉月は大声を出したことだった。

「風音は、絶対に目を覚ます。大丈夫……風音は強いから。覚ましてくれないと、僕……怒るからね」

大分気持ちが落ち着いてきた葉月は、立ち上がると優しく風音の髪に触れる。風音の眠っている顔を見て、葉月は顔を赤くしながら小さく「馬鹿」と呟いた。

(ほぅ……今日は、意外と冷静だな……)

冷静に風音を見つめる葉月を見て、真冬は内心驚きながらも無表情で「そうだな」と呟く。

「早く、目を覚ませ……馬鹿……」

葉月の頬を、涙が伝った。
< 18 / 26 >

この作品をシェア

pagetop