幸福を呼ぶ猫

黒猫を取り敢えずお風呂に入れる。猫はお風呂嫌いだと思っていたが、その黒猫はシャワーを浴びせても大人しかった。
タオルで体を拭いてやるときも、ドライヤーで乾かすときも一言も鳴かずされるがままだった。

底の浅い皿にミルクを注いで、適当に床に置く。
「じゃあ、それ飲んで大人しく待っててね」
「にゃぁ」
漸く黒猫は一言鳴いた。
それは「分かった」と言ったのか「ありがとう」と言ったのかどちらなのだろうと思った。

このとき既に僕はこの黒猫が言葉が分かると、確信していたのだと思う。

黒猫がミルクを飲んでるうちに自分もお風呂に入る。いつもは湯船に浸かるが、今日は黒猫が気がかりでシャワーだけ浴びて直ぐにお風呂から出る。
すると黒猫はまだミルクを飲んでいた。

急ぎ過ぎたかもしれない。こいつは大人しいし、もう少しゆっくりしても問題なかっただろう。
いつもと違う夜に、いつもと違う僕。
何だか、少し笑えた。
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