かぐわしい夜窓
7
三ヶ月待った。


【サシェ、わが巫女。おまえは二十五になった。次の者の名を教えよう】


たしかにお告げがあった。

万物の何ものにもたとえられないあの音で、可愛らしい文字列を聞いた。


目覚めてすぐ、歌まもりさまをお呼びしてちょうだい、と頼む。


忘れるだなんてとんでもない。聞き逃したなんてあり得ない。

いままでは、やはりお告げがなかったのだ。


そう確信するほどの、たしかな手応え。脳裏に刻まれた名前を、メモなどなくても明確に誦じられる。


「お呼びに従いまいりました。どうされましたか。……巫女さま!?」


拭くものを、と歌まもりさまに胸元から取り出したハンカチを渡されて、ひどい顔をしているとわかった。


涙に濡れた顔を上げる。


「……歌まもりさま。わたくし、今日が誕生日だったようです」

「では……!」


こちらよりも明るい顔をした目の前のひとに、頷く。


「お告げがありました。次の巫女の名を忘れないうちに書きます。用意してくださいますか」

「はい、すぐに」

「わたくしの生まれた日は、春だったようなのです。わたくしが施設に預けられたのは冬でした。預けられた日を仮の誕生日としたので、ずれてしまっていて……」

「そうでしたか。お告げがあって、お誕生日もわかって、ようございましたね」

「はい」

「おめでとうございます」


はい、と答えることしかできない。唇が震えた。
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