罠にはまって仮の側妃になったエルフです。王宮で何故かズタボロの孫(王子)を拾いました。

4ー5 夜会の後



 夜会が終わった後、私は、王宮のとある一室に向かう。

 「サンドラ様、ドレスが!」と追い縋るアリエルちゃん付きの侍女達を放って、私は風花ちゃんの力を使って、廊下をすごい速度で滑るように走った。だって、会いに行かなきゃ!

「皆〜! 起きてる!?」

「サンディ!」
「ドラちゃん!!」

 そう、王宮の一室に集まっていたのは、私の棟に通っている王子王女達だ。

 本当なら、0時もすぎたこんな深夜、まだまだ10代のこの子達は寝ていなきゃいけない時間だ。
 けれども、今日、あの会場で宣言したことは、この子達の将来に関わることだ。その目で、しっかり見ておかないといけない。だから特別に、光花ちゃんの力で、会場の様子を、中継してもらっていたのだ。

 子ども達は私が部屋に入ってくると、駆けてきて私に抱きつく。

「どうどう? 私、かっこよかった?」

 ニコニコ笑っている私に、「ドラちゃんかっこ良かった!」「最高の姉貴だった!!」と、子ども達は手放しに褒めてくれて、私は誇らしくて、ニヤニヤと有頂天だ。

 でも一人だけ、嬉しいような、泣きそうなような、複雑な顔をした子がいる。

 話しかけようとしたけれども、王女勢の、「ドラちゃん、近くで見ると本当に綺麗……!!」「紫のネックレス、似合ってる!」「黒ドレス、私も着たい! お揃い!」という、オシャレトークに阻まれて、近づくことができなかった。

 そのうち、扉から、子供達の母である側妃達や、成人した王女達も駆け込んできた。彼女達は大人なので、夜会に参加していたのだ。

「お姉様……!」
「一生ついていきます! お姉様、大好き!!」

 そんなことを言うフリーダちゃん達にまで抱きつかれて、私のドレスは敢えなくご臨終した。
 私を追いかけてきたアリエルちゃんの侍女は、私のドレスを見て、魂が抜けたような顔をしていた。でもでもその、今日は特別な日だから許してほしい……。


 興奮冷めやらぬまま、皆と解散し、私はフリーダちゃんとルーファスと一緒に、自分の棟に帰っていく。
 一人では脱げないドレスは、王宮でアリエルちゃんの侍女達に脱がしてもらったので、私もフリーダちゃんも、いつもどおりの軽めのワンピースだ。

 なお、私とフリーダちゃんが服を脱がしてもらっている部屋に、ルーファスもいなければいけなかったのは、17歳の男の子にはちょっと刺激が強かったかなと反省している。他の王女王子達の帰宅のための護衛に私の精霊友達をつけてしまったので、私のところに残った精霊は火花ちゃん一人だけだったのだ。隣の部屋で待ってもらって、またナイフで刺されたりしたら、笑い話にもならないので、抵抗するルーファスを抑え込んで、同室で待つように強制した。
 もちろん、同室といっても、衝立越しだ。
 けれども、シュルシュルと衣擦れの音をさせながら、「フリーダちゃん、胸おっきい!」「お姉様の方が……」「ちょ、ちょっとだめよ! やん、フリーダちゃんのえっち!」などといちゃついていたら、衝立の向こうから、「僕もいるんだけど!!」と怒られてしまったのだ。ごめんってば。

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