好きだけど、好きなのに、好きだから
誠と廊下で話ていると、麻衣ちゃんが慌てた様子で走ってきた。

「先輩、先輩!」

「ん?」

「佐伯のジャージ、先輩のと同じいい匂いがするんです」

うっ……まずい。

同じ匂いがするのは、昨日洗濯してきたからだ。

「……」

誠をチラッと見ると……

「優里亜どういう事?」

うわぁ、すごく不機嫌な顔してる。

麻衣ちゃんは、興味津々な顔でこっちを見てる。

「その……昨日、日誌書いてる途中で眠っちゃったの」

二人は、じっと私を見てる。

「起きたら、ジャージ掛けてくれてて……」

「ふーん」

ますます、不機嫌になる誠。

「えっ!あの佐伯が……」

驚く麻衣ちゃん。

「あいつさぁ、優里亜に惚れてんじゃねぇの?」

出た出た!

男子と仲良くすると誠は、すぐそうやって言うのだ。

はぁ……

「そんなわけないでしょ!」

麻衣ちゃんが、佐伯君がバスケットにしか興味がないって言っていたのを思い出して、

「ねぇ、麻衣ちゃん!」

同意を求めてみたけど、

「ふふっ。先輩には興味あるのかも」

麻衣ちゃんはニヤッとしてる。

「俺だったら、興味ねぇやつにそんなことしねぇ」

誠は、不機嫌なまま吐き捨てる。

だから、こっそり返したかったのに……
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