好きだけど、好きなのに、好きだから
新入生が、入部して二週間が経った。

「優里亜、お疲れ」

「気をつけて帰れよ」

健と誠が帰っていった。

「姉御、お疲れっす」

「優里亜先輩、すみません。今日はお先です」

大ちゃんと麻衣ちゃんも帰っていった。

あれっ?

いつもは誰もいない時間なのに、体育館からドリブルするボールの音。

まだ誰か残ってる?

入り口のドアを少しだけ開けて、体育館を覗く。

佐伯君だ。

一人シュート練習をしている。

あんなにきつい練習の後なのに。

ふふっ。

バスケットしてる時の佐伯君って、本当いい顔してるよね。

ゴールに向けられる、真剣でまっすぐな眼差し。

私はドアの隙間から、佐伯君のシュート練習に見入ってしまっていた。
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