好きだけど、好きなのに、好きだから
「いたいた」

キャプテンと誠さんだ。

「ちぃす」

俺は、二人に挨拶をした。

「おぅ」

優里亜先輩は、二人に視線を向ける。

「二人ともどうしたの?」

誠さんが先輩の顔を覗き込む。

「空気圧チェック?」

「うん」

「いつも放課後じゃん。何で今やってんの?」

誠さんは、ボールを一つ手に取って指先で回す。

黙っている先輩に、誠さんが続ける。

「部活の後、何かあんの?」

「えっ!何もないよ」

もしかして、先輩は俺の練習に付き合うために……

誠さんが、先輩の肩を組んで絡み出す。

「ふーん。俺らに何か隠してんじゃねぇの?」

優里亜先輩と誠さんのやり取りを見兼ねたキャプテンが、口を開く。

「おばさんが、最近優里亜の帰りが少し遅いって言ってたみたいで。母ちゃんから俺に連絡が来た」

先輩は、何も答えないままだ。

俺は、練習に付き合ってもらっていることを言おうとした。

「先輩は……」

「あっ、佐伯君!」

先輩が、俺の言葉を遮った。

俺は、それ以上は言ってはいけない空気を察した。

結局、練習に付き合ってくれる理由は聞けないまま昼休みが終わった。
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