好きだけど、好きなのに、好きだから
「佐伯君は、うちに来てくれくれると思ったんだけどな」

「あぁ……すみません」

俺は頭を下げた。

優里亜先輩は黙って、俺と高岡工業の監督のやり取りを聞いている。

「今回の練習試合は、うちが全部勝つ。藤森北に入ったことを後悔させてみせるよ」

「……」

俺は返答に困った。

はいと言うのも違うしな……

「佐伯君、行こう。失礼します」

それまで黙っていた先輩が、いつもより少し強めな口調で言った。

そして、半ば強引に控え室を出た。

優里亜先輩……?

隣にいる先輩を見ると、いつもの笑顔はなくて何だからしくねぇ。

「佐伯君はアップに戻って!」

口調はいつもの先輩と変わんねぇけど、明らかに様子が違った。

控え室の前には、アップ中だというのにキャプテンと誠さんが待っていた。

二人は先輩の肩に手を置いて、宥めているようにも慰めているようにも見える。

俺は、そんな優里亜先輩の様子が気になりつつもアップに戻った。
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