八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
 ボソリとつぶやきながら、椿くんが紙コップと紙皿を置く。

 わたしの……お別れ会?

 ポカンとしている目の先に、安斎さんと矢野さんがピロピロと旗のようなものを広げた。

【三葉っち♡ありがとう】の文字が印刷された紙が、可愛らしい飾りと一緒にゆらゆらしている。

「今日で三葉っちが最後ということで、お別れの儀式しちゃいまーす!」

「そうそう。うちら、張り切って準備してきましたよ〜」

 ノリノリの二人に圧倒されていると、となりに椿くんが座った。

「俺が、呼んだ。迷惑だった?」

 ううんと首を振って、部屋を一周見渡す。
 安斎さんと矢野さんが用意してくれたバルーンや花の飾りを、みんなが壁へつけていく。

 すごく華やかになって、かわいい。

 ムスッとしていた藍くんが、赤いマントを手にして「ん」とわたしへ手渡した。

「……ありがとう。王様? ちょっと、恥ずかしいな」

 ぎこちなく笑うと、藍くんは目を合わせないまま。

「文句言わずに、つけろよ。今日の主役は、アオイなんだから」

 ぶっきらぼうに言うと、琥珀さんの方へ戻って行った。

 いつものリビングが、まるで別の世界のように変身した。

 わたしのために、みんなでこんな素敵なパーティーを計画してくれていたなんて。始まる前から、涙が出そう。

 リビングのドアが開いて、安斎さんが手招きをする。また誰か……来た?

「ほーら、早く早く!」

「ちょっ、ちょっと、引っ張らないで、よ」

 入って来たのは、髪をふわりとさせてオシャレな服を着た穂村さんだった。
< 151 / 160 >

この作品をシェア

pagetop