八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
「えっ、それって……ストーカーってこと⁉︎」

 前のめりになるわたしの前で、藍くんがシッと中指を立てる。

「バ、バカ! 声のボリューム! なんのために部屋へ連れて来たんだよ」

「ご、ごめん」

 予想外な話すぎて、取り乱してしまった。

 八城兄弟には、熱狂的なファンがいる。
 他クラスの女子がやたら教科書を借りに来たり、この前はジャージを頼まれていた。

 ゴミ箱を漁っているところを見たこともあるし、なにに対しても限度というものがある。

「それで、藍くん、大丈夫?」

「あの二人には、あんま心配かけたくないからさ」

 表には出さなくても、やっぱり兄弟だ。
 ちゃんとお兄ちゃんのことを想う弟なんだなぁ。

 胸がジーンとほっこりしていると、照れくさそうにしていた目が真剣になった。

「碧に、犯人探すの手伝ってほしくて」

 最初は驚いたけど、すぐに深くうなずく。

 困っている藍くんを、放っておくわけにはいかない。
 わたしにできることがあれば、協力したい。
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