八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
 遠野さんに呼び込められた。

「みや、ごめん。私が盛り上がってたから、嘘つかせちゃったんだね」

 ううんと首をふる穂村さんが、ごめんと繰り返す。

 彼氏にも、ちゃんと話そうと言っていたし、とりあえず一件落着。仲直りできてよかった。

 腕をスッと引っ張られて、遠野さんが耳打ちする。

「そのメガネイケメンと美少女、映画館入る前からつけてたよ。知り合いで安心した」

 全然気づかなかった。心配してくれていたのかな。
 穂村さんと腕を組んだところも、見られていたんだ。約束したのに、ごめんなさい。

「なんか、かっこよくなったね。三葉さん」

 去り際に落とされたセリフで、まばたきするのを忘れた。

「えっ、ええ⁉︎」

 思ったより、大きな声が出る。
 聞き間違いでなければ、今、【三葉さん】って……。

「じゃ、またね」と手をひらひらさせて、遠野さんたちは帰って行った。

 全身の血の気が引いていく。
 とうにバレていた。わたしが女だってこと、穂村さんに話されたらどうしよう。

「芹奈となに話してたの?」

 腕の横から、穂村さんがひょこっと顔を出した。

「近い」

 わずかな隙間に手を突っ込んで、椿くんが間に入り込む。
 やれやれと言う顔の藍くんが、わたしの手を引いて走り出した。

「急げ、バスに乗り遅れる!」

 振りかえるより早く、椿くんに腕を取られて前進する。待ちなさいよと、穂村さんが叫びながら藍くんの横へ並んだ。

 その光景がおかしくて、思わず吹き出す。

 やっぱり、みんなと過ごす毎日が好き。
 男子のままでいたら、この笑顔を壊さないでいられるのかな。
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