幽玄の灯火
ほとんど紛糾していた!

そのことに気づかないわたしがいたのだ!

あの夜に、君を抱くことはなかった。

それどころか、君はそこに決していなかった。

妄想の産物のなせる業!

悲しみよ。

この趣きのある調べよ。

灯火だけは消えないでくれ。

消さないでくれ!

まだ宴は始まったばかりではないのか、わたしの勘違いなのか。

すべてが幻であったのなら、このファンタジーは誰が始めて、誰のために始めたのか!

愛とは何か。

寂しいわたしのために用意された幻か!

わたしのため?

それではすべてはわたしのためだと言うのか。

まったく、けしからんではないか、わたしは小さな人間、ひと茎の葦、パスカルよ、
パスカルよ。

教えてくれないか。

人文主義とは一体!

嗚呼、脆くも崩れ去った啓蒙主義の残骸がこのわたしなのか。

もう、誰も愛せない。

もう、あの美しい田園の思い出さえも、あの、紺碧の空も!

披星戴月。

悲しいかな!

すべてが紛糾した今となっては、悲劇に埋もれた哀れな小さな男として小さな灯火として生きるしかないのか。

君と言った。

わたしは確かに君と言った!

しかし、この幽かな灯火を見つめているのはわたし。

灯火は!

ついにわたしは完全に狂人として破れた。

そして、灯火は消えた!

今!

あんなに消えないで欲しいと、消さないで欲しいと願った灯火は消えてしまった。

明日から毎日続く夜はどう生きようか!

哲人よ。

遥かなる哲人よ。

わたしに教えてはくれまいか?

人を愛するとは。

人の心を愛するということとは一体どういうことかを。

灯火が消えた今、見い出せるものはきっと、君の声しかないだろう。

だからわたしは生きる。

その微かな俤に縋って。
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