アンドロイド・ニューワールドⅡ
「他にも、遊園地内を歩きながら、いきなり『はぐれないように、手、繋ぐか?』と不可解なことを言ってきました」

と、私は説明しました。

はぐれたくないのなら、服を掴むなり、足を掴むなり、髪の毛を掴むなり、手を繋ぐ必要はないはずです。

それに、はぐれたときの為に、待ち合わせ場所を決めておく、など。

いくらでも対策はあるはずなのに、何故か手を繋ぎたがったり。

「帰り際には、『なんか…今日、デートみたいだったな』などという、意味不明なことを言っていました。幼馴染みと二人で遊園地に行くだけで、何故デートになるのですか?」

と、私は聞きました。

全く理解不能です。

「おまけに、主人公である私が、テキストを忘れてしまっただけで、『お前、面白いな』と笑いながら言われました」

「…」

「何が面白いのでしょう。彼は私に喧嘩を売っているのでしょうか?」

と、私は聞きました。

人の失敗を嘲笑い、あまつさえその様を見て「面白い」とは。

人として最低の部類に入ると言わざるを得ません。

あまりの理不尽に、もうあの幼馴染みを攻略するのはやめようか、と思ったのですが。

あの一連のやり取りの中に、人間にしか分からない、アンドロイドには理解し難い微妙な感情の推移があるのかもしれない。

そう思って、奏さんに聞いてみた次第です。

「奏さん。どういうことだと思いますか?」

「えっと…それは…。俺も詳しくは分からないけど…」

「奏さんにも分からないのですか」

「多分…それは、乙女ゲー特有の言い回しと言うか…。イケメンだからこそ許される台詞と言うか…」

「イケメンだから許される…?人間の顔は、美容整形でもしない限りは、自分の意志には関係なく、生まれながらに決まっているものです。顔によって許される、許されないことがあって良いのですか?」

と、私は聞きました。

すると。

「良いも何も…。世の中にはね、瑠璃華さん。イケメンだから許されること、美人だから許されることっていうのがあるんだよ…。悲しいことにね」

「そのようなことがあるのですか?」

「あるんだよ…。例えば俺が、女の子に頭ポンポンなんてしたら、即刻犯罪として通報されるけど。でもイケメンなら許されるんだ」

と、奏さんは真顔モードで言いました。

頭ポンポンとは何のことでしょうか。

「つまり幼馴染みのあの台詞は、あの顔だから許されるということですね?」

「あの顔って言うか…乙女ゲーだから許されるんだよ」

と、奏さんは言いました。

成程、許されるのですね。

アンドロイドの基準としては、とても許せないことですが。

人間基準なら許されるそうです。

理解し難いですね。

「他にも気になることがあるのですが、聞いても良いですか?」

「…乙女ゲーのノリを、現実の男に聞かれるのは辛いものがあるけど…」

「辛いならやめた方が良いですか?」

「いや…良いよ。どうぞ…」

と、奏さんは言いました。

許可を頂きましたので、では質問したいと思います。
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