アンドロイド・ニューワールドⅡ
「それにしても、一体どうしたの、瑠璃華さん」

と、奏さんは言いました。

「何がでしょうか」

「何がって。さっきの不登校宣言だよ。どうかしたの?悩みがあるなら相談乗るよ…?」

と、奏さんは心配そうに言いました。

…何のことでしょうか。

私はただ、明日から学校に来ないと宣言しただけです。

悩みがあるなど、一言も言っていないどころか、匂わせてもいません。

「悩みはありません」

「そ、そうなの?」

「はい。明日から不登校になります」

「…やっぱり悩んでない?」

「ちなみに、青薔薇学園に通う碧衣さんも、明日から不登校です」

「従兄弟揃って悩んでない…!?」

と、奏さんは聞きました。

奏さんの中では、私と碧衣さんは従兄弟同士の関係、ということになっているのでしたね。

「私はともかく、碧衣さんは悩んでいると思いますよ」

「あの人が?何に悩んでるの?」

「一昨日でしたかね。メールが来ましたから。『紺奈局長に毎分メッセージを送っているのに、既読スルーされるんです!』って。とても悩んでいる様子でした」

「…それは、仕方ないよ…。ブロックされないだけマシでしょ…」

「きっと毎分だからいけないんだろうと思い、毎秒にしてはどうか、とアドバイスして、円満に解決しました」

「瑠璃華さんの叔父さん、今頃病んでなきゃ良いけど…」

と、奏さんは遠い目で言いました。

「しかし、碧衣さんも明日から、第2局に戻るので。久々に第2局で紺奈局長に会えるのを、楽しみにしていると思います」

と、私は言いました。

きっと今頃、紺奈局長に会えるのが楽しみで、涎を垂らしている頃ですね。

アンドロイドは涎を垂らさないので、あくまで比喩ですが。

「…?第2局に戻る?」

と、奏さんは首を傾げました。

「はい。私も明日から一週間ほど、『Neo Sanctus Floralia』第4局に一時帰宅します。だから不登校になります」

「え…ど、どういうこと?」

「有り体に言えば、里帰りのようなものです」

と、私は答えました。

これは、『新世界アンドロイド』なら誰もが、一年に一度経験する。

つまりは、年一回の定期検診。

人間ドックならぬ、アンドロイドックを受けに戻る訳です。

何だか今、とても上手いことを言った気がしますね。
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