アンドロイド・ニューワールドⅡ
場所を変え、校舎裏にやって来ました。

ここなら、人気はありません。

そこで、改めて。

「い、一体どういうこと?何がどうなってるの…?」

と、奏さんは困ったように聞きました。

「私にも、何事か分かりません」

と、私は言いました。

すると。

「久露花瑠璃華さん」

と、琥珀さんは私を呼びました。

何処か、棘のある声です。

「何でしょうか?」

「何故、あなたまでついてくるのですか?私は、緋村奏さんにお話をしたいのです」

と、琥珀さんは言いました。

「あなたには、もう用はありません。帰ってくださって結構ですよ」
 
と、琥珀さんは突き放すように言いました。

…。

…何でしょう。

私の胸の奥から、何か覚えのある感情が、沸々と湧き上がってくるような気がします。

「ですが、私は奏さんの親友ですので」

と、私は答えました。

「それに、この後私は、奏さんと予定があります。帰る訳にはいきません」

「予定?何の予定ですか?」

「体育館で、一緒にバドミントンをします」

と、私は言いました。

すると、琥珀さんはどうでも良さそうな顔になりました。

「そうですか。ですが、私もこの後、緋村さんと予定があります」

「何のご予定ですか?」

「一緒にデートをします。恋人は、共にデートに行くものですから」

「そうですか」

と、私は言いました。

デート…デートですか。

本や映画の中でしか、聞いたことのない言葉です。

「従って、あなたは必要ありません。私はこれから、緋村さんと二人きりで放課後デートをしますので、瑠璃華さんは先にお帰りください」

と、琥珀さんはきっぱりと言いました。

…何でしょう。

やはり、胸の奥に異物感が…。

と、思ったとき。

「ちょ、ちょっと待ってって!」

と、奏さんは声をあげました。

「そうですね、そろそろ行きましょうか緋村さん。デートは何処に行きたいですか?」

「は、はい?」

「学校周辺にあるデートスポットは、全て調べてきました。とりあえず、今日は初日ですから…近くにある、クレープ屋に行きましょう」

と、琥珀さんは言いました。

そんなお店があるのですか。この近くに。

それは知りませんでした。

この学校に、既に半年以上通っている私よりも。

つい一昨日、『Neo Sanctus Floralia』から外に出てきた琥珀さんの方が、周辺の地理に詳しいとは。

下準備は完璧、ということですか。

「明日は映画、明後日は遊園地、そして明々後日は、ついにホテルですね。こうして、段階を踏んで、深い恋人関係になっていきましょう」

「君は何言ってんの!?」

と、奏さんはぎょっとして言いました。

額に汗が滲んでいますが。大丈夫でしょうか?

とはいえ、今の私は、他人を心配している場合ではないのですが。
< 283 / 467 >

この作品をシェア

pagetop